【書籍】『ババヤガの夜』(王谷 晶)レビュー!

書籍

※人名、組織名などは敬称略でお伝えしております。

目が離せないストーリー!

主人公の「新道 依子(しんどう よりこ)」は、女性でありながら大柄な体躯を誇り、鍛え抜かれた肉体の持ち主。バイトを掛け持ちしながら生計を立てているが、喧嘩好きで暴力を趣味と自称するような人物だ。そんな彼女が、街中でチンピラを叩きのめしたことから物語は始まる。

腕っぷしを見込まれて連れてこられたのは、関東有数規模の暴力団「内樹會(ないきかい)」。そこで組長「内樹 源造(ないき げんぞう)」の一人娘「尚子(なおこ)」の運転手兼ボディーガードを、なかば強制的に押し付けられてしまう。

暴力に魅入られた依子と古風なお嬢様として育てられた尚子。自分とかけ離れた存在である相手との接し方に戸惑う2人だったが、お互いの事情を知るにつれて相手に対する情を抱くようになる。

交流を重ねる2人に闇社会の理不尽さが容赦無く降りかかる! はたして依子は、どのような決断を下すのだろうか?

日本人作家初のダガー賞を受賞!

日本人作家初となる「インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)」受賞というニュースが大々的に報道されたので、タイトルだけは聞いたことがある方も多いだろう。

ダガー賞はイギリスの文学賞で英国推理作家協会が主催しているため、ミステリー要素を期待する方がいるかもしれないが、本作は事件が発生して解決していく「推理モノ」ではない

ただ物語の構成について、あるトリックが施されており、読者をうならせる展開を見せてくれるため、そこが評価された可能性はある。

ちなみにタイトルの『ババヤガ』というのは「スラヴ民話に登場する魔女」らしい。なぜこのタイトルになったのかは、読めばわかるパターンだ。

気になる感想は?

結論から言えばかなり面白かった。

まず、内容に触れる前によかった点をまとめると、文章にクセが無く非常に読みやすかった。持って回った表現や難解な言い回しはほとんどないので、読んでいる最中に引っ掛かりを覚えることが無く、スラスラと読めるハズ。

ストーリー構成もシンプルなため内容がわかりやすい。導入やテンポの良さから「青年マンガ」のような雰囲気を感じたところだ。

ページ数も多過ぎず、手軽に読める点がポイント。本を読みなれている方なら「1時間半」、時間が掛かる方でも「3時間ぐらい」で読めるぐらいのボリュームだと思う。

読みやすさという意味では、活字にそれほどなじみがない方にもオススメ。薦められるかどうかは別にすれば、小学校高学年から中学生ぐらいの年齢でも理解できる内容だった。


宣伝文句ではジャンルを「バイオレンスアクション」としていたが、個人的にはそこまでグロさを感じなかった。

もちろん暴力団と関わるストーリーなので、主人公の依子は容赦なくボコボコにされるし、ケジメとして身体の一部を切除された組員や拷問好きのサディストなども登場する。

しかし、依子自身は殴り合いを楽しんでいるため妙なさわやかさを感じるし、拷問自体の直接的な描写は無かったりするので、終始ハードで重苦しい雰囲気がただよっているわけではない。

痛みや苦しみ、腹立たしさは文章からヒシヒシと伝わってくるが、それぞれの尺や描き方を絶妙にコントロールしているせいか、不快感に流されずに物語を追っていけるという感じで、見事にエンターテインメント作品として成立していた

なお、終盤に明らかになる叙述トリック的なくだりについては、人によっては無理があるのでは? と感じてしまうかもしれない。しかし、本作に込められているであろうメッセージに絡めたことで説得力を感じたし、個人的にはアリだと膝を打った部分

本作の魅力にバイオレンス要素があるのは間違いないが、私としては女性2人が自分の生きる意味を見出す「人間ドラマ」だと感じたので、できれば女性にこそ読んでほしい作品だ。

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