©Katada Tamami
※人名、組織名などは敬称略でお伝えしております。
「害になる人」の精神構造とは?
作者は女性の精神科医。
立場上、悩みを聞く機会があるらしいが、
他人の攻撃によって疲弊してしまった、
という内容のものが特に多いとのこと。
なお、この場合の攻撃とは、
物理的なものではなく間接的なもの。
つまり、直接的に殴る蹴るをされるわけではなく、
罵詈雑言や人格否定、悪態をつかれたりするものだと、
ご理解いただきたい。
本作はそういった他人への攻撃欲の強い人間について分析しつつ、
対応方法を記したものである。
妻を束縛しようとする夫や、子供のやる気をそごうとする父、
先輩を陥れようとする後輩や、
自分の地位が脅かされないよう部下に仕事をさせない上司など、
さまざまな実例を挙げて紹介している。
まず、前提として大人に向けた内容である。
学生が読んでも無駄になるというワケではないが、
子供のイジメ問題などとは本質が異なるので、
そのあたりは参考にしづらいと思う。
あと、感情移入や自己投影しやすい方など、
内容に入り込んでしまうタイプも注意が必要。
他人から攻撃される例として挙げられているケースが、
かなり具体的に描写されているため、
加害者の悪辣さと被害者の不憫さが、
ひしひしと伝わってきてしまう。
自分とは無関係と割り切れるのならば問題ないが、
登場人物の扱いに一喜一憂してしまう方には、
あまりおすすめできない。
本作は小説ではないので『痛快TV スカッとジャパン』のように、
悪人がこらしめられるような展開もない。
人によっては単にイライラを感じて、
フラストレーションをためるだけになってしまう、
という可能性もあるわけだ。
個人的に重要だと感じたポイント!
- 攻撃者の目的を把握する!
- 攻撃者が改心することはない!
- 自分を変えるしかない!
●攻撃者の目的を把握する!
仕事の場や夫婦関係で無能扱いされ続けると
それが事実のように感じて自信を失ってしまうが、
相手は自分を支配するために、
根拠のないことを言ってくる場合もある。
恐怖心をぐっとこらえて相手を観察し、
「なぜ」攻撃しようとしてくるのか
その狙いを見極めるべし!
動機が明確になれば予防策が取れたりもする。
●攻撃者が改心することはない!
こちらが言いなりになっていれば、
いずれは相手が改心して関係が改善されるかもしれないと
期待するのは意味がない。
それどころか事態が悪化するだけなので、
耐えることはオススメしない。
基本的に対象とは距離を取るように心掛ける。
状況次第では転職や転属、離婚すらも視野に入れる必要がある。
●自分を変えるしかない!
ターゲットにされやすいのは、いわゆる「いい人」が多い。
相手からの一方通行ではこの関係性にはなり得ないので、
不本意ながらそれに協力してしまっている自覚は持つべし。
もちろん悪いのは攻撃者だが、その性質を見抜けなかったり、
弱みを見せてしまうのは落ち度でもある。
逆上させるのは悪手だが、
そういった事態を回避する努力はしなければならない。
まとめ!
本作での対応方法をザックリとまとめると、
相手は変えられないので自分を変えろ! その一言に尽きる。
例に出されている他人を攻撃するタイプは、
本人が自覚をもっていないケースが多い。
むしろ自身の中では善意であったり
正当性を持った上での行為なので、
悪意の指摘や改善を求めても治らないと結論づけている。
話し合いが無駄とまでは書いていないが、
本格的にターゲットにされる前に、
回避するのがベストというニュアンスだ。
チンピラ的な発想になってしまうが、
ナメられないように振る舞うというのもアリ。
無論、親しみやすさとのバランス感覚は必要だが……。
もし、ターゲットにされてしまった場合、
変わるかどうかわからない相手に期待するよりは、
物事の受け止め方や居場所など、
自分の裁量でなんとかなる部分を変えたほうが建設的、
というのが主な助言である。
さて、どんな方にオススメかといえば、
こういった人物のメカニズムに興味がある人。
身近な人に当てはめて分析すると面白い結果が得られるだろう。
また、被害者として同様の立場にある方が、
自身を客観視することで現状を見直す
きっかけにすることはできると思う。
ちなみに個人的には興味深く読めたが、
一冊を通して内容の繰り返しというか
重複部分が多い点は気になったところだ。
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