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©アン・シャーリー製作委員会
第1話「世界って、とてもおもしろいところね」感想
かの有名な『赤毛のアン』を原作にしたアニメ作品。タイトルは知っていたが、原作は読んだことがない。加えて「高畑勲」監督による「世界名作劇場」バージョンも見たことがないので、基本的に初見の感想になる。
孤児院で暮していた少女「アン・シャーリー」が、「マシュウ」と「マリラ」という老兄妹に引き取られるところから物語が始まる。
元々2人は働き手になる男の子を望んでいたが、アンの人柄に惹かれて養子にするという流れだ。
子供を育てたことがない老兄妹が孤児の少女を引き取り、お互いに影響を受けて成長していくという、ハートフルな人間ドラマが描かれるのだろう。
主人公のアンは自分の外見や名前にコンプレックスを抱いているが、想像力豊かでしゃべり好き。冒頭から話しっぱなしなので、彼女の独特のセンスやトークに苦手意識を持ってしまうと視聴を続けるのが厳しそう。
かなり過酷な生い立ちなので気の毒さを感じるが、頭の回転も早く打算的な芝居もする、したたかさも持ち合わせている人物。性格面の深掘りがされていないので、好きになれる主人公かはまだなんとも言えない。
とはいえ、まくし立てるように話をされても、内容が聞きやすかったのはお見事! 声自体は良いのは間違いないし、演技力もありキャストとしても合っていたのだと思う。
ストーリーについて。結局アンを引き取る判断をしたのが、押しに弱そうな兄のマシュウではなく、気難しそうな妹のマリラだったところがよかった。大人になると人の良さを隠し切れないキャラクターに感情移入しやすくなる。
また、孤児を引き取る理由が労働力の確保を前提に考えられているところが、当時の価値観や文化を反映しており非常に興味深かった。
キャラクターデザインは今風のものではないが、アンの表情は活き活きと描かれていたので作風にはマッチしていると思う。
ほかにも花や木々など自然の背景については、繊細に描き込まれておりなかなか美しかった。建物や人工物とは明らかに異なるタッチだったので、意図的な演出なのだろう。
どの程度原作を再現できているかは不明だが、それなりに楽しめたという結論。引き続きレビューを書くかは微妙だが、何話か視聴を続ける予定だ。
ちなみに本作については原作の解釈をめぐって、一部で物議をかもしている。
世に出回った創作物については、どんな分野の物であれ何を言われても仕方ない、というのが個人的な考え。そもそも私自身も合わなければ合わないと正直に申し上げる派である。
賛否両論はもちろん、間違いがあれば指摘されるのも当然だ。しかしながら本作の関しては、事態が少々複雑化している。
批判の声を挙げて注目を集めたのが、原作の翻訳を担当されていた方。いわばその道の権威のような存在だったため、本作『アン・シャーリー』に対して明確な「不正解」を突き付けた形になってしまったのだ。
その結果、批判的な意見を持った層がこの件を引用することになり、より厳しい意見が集まりやすくなったという具合である。
コレは初見勢からするとコワイ現象。『赤毛のアン』という作品を今回の『アン・シャーリー』で初めて知ったという視聴者がいて、その中には第1話を楽しく見たという少年少女もいるハズだ。
そういった子たちがこのような意見を目にしたらどう思うだろうか? 自分たちが面白いと感じた作品の感想も怖くて語れないし、なんなら間違いだらけと言われてショックを受けるかもしれない。せっかくの『赤毛のアン』に対する興味も失せてしまうだろう。
誤解しないでいただきたいが、間違いを指摘した方を批判するつもりは一切ない。むしろ敬意すら感じている。原作に対する強い想いは伝わってくるし、こういう方の存在が正確な情報の継承に貢献しているのは事実。
だからこそという言うべきか、もう少しマイルドにこの件を周知して、原作小説を薦めるような流れを作れなかったものかと思ってしまったのだ。
第1話のサブタイトルから察するに、本作は主人公が世界の素晴らしさを知るという物語になるのだろう。そして原作にもそういったメッセージが込められているハズ。
原作を推している方々には、少しでもいいでのそのあたりも意識してもらえればと思う。
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