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注意:このレビューは映画『君たちはどう生きるか』を見て、
楽しめたけど面白さが上手く伝えられない、中年おじさんの駄文です。
作品のネタバレを含みますし、新たな知見が得られるような物ではありません。
オッサンが友人相手に話していた内容をまとめたものなので、
その点をあらかじめご了承いただければ幸いです。
※人名、組織名などは敬称略でお伝えしております。
●自己紹介 ジブリにわかファンのおじさん
自己紹介がてら私自身の映画に対するスタンスをお伝えしておきたい。
・映画というジャンルについて詳しくない。(映画館に行くのは年に1~2回ぐらい)
・宮崎駿監督作品は大体見ている。(『崖の上のポニョ』のみ全くの未見)
・考察は苦手である。(資料を読み漁ったりもしないので知識不足)
私は日頃、ラブコメを紹介するだけの中年おじさんだが、
「ジブリ作品」のリアルタイムレビューをする機会なんて、
今後訪れないだろうと思い、ある種の記念として記しておくことにした。
いつもと文体が異なるのは差別化のためというよりは、
メモ書きのような形で勢いで書いているせいである。
ラブコメ紹介のように動画にする予定はないので、
ご興味がおありであれば引き続きご覧いただきたい。
●評価 わからなくても面白い!
結論から言えば私は結構楽しめた。
「2000円」払っての鑑賞だったが、
決してもったいないとは感じなかったし、
見てよかったと思える作品だった。
過去劇場で鑑賞したジブリ作品は
『千と千尋の神隠し』と『ハウルの動く城』の2作だが、
当時それらを見た時と同じぐらいの満足感は得られた気がする。
世間では難解な作品である、という声が多く聞こえて来るが、
話が理解できないというほどではないと思う。
誤解しないでいただきたいのが、
私の理解力が高いとかそういうことではない。
ハッキリ言えば私も一部しかわかっていない。
わからない部分を無理に読み解こうとせず、
わかる範囲を見たまま解釈すれば、どういう物語であるか、
なんとなくわかる程度にはまとまっている、という意味である。
逆に言えば、視界に入ったものすべてを情報として理解し、
正しく解釈しようとしてもおそらく無理だと思う。
映画内での説明が圧倒的に足りていないし、
作り手側にそれをさせる気があるとは思えないからだ。
個人的にどういう風にこの映画を見たのかについては、
レビューの最後にまとめるが、
「よくわからなかった」と「面白かった」は両立する。
もし、他人にどこが良かったのかを説明できなかったとしても、
楽しめたのであれば、それは自分にとって正しい感想だ。
●ストーリー 結局どういう話なのか?
主人公の牧 眞人(まき まひと)は、
現実にさまざまな問題を抱えていた。
そんなある日、亡き母が自分に対して残してくれた
小説『君たちはどう生きるか』を読み感銘を受ける。
その後、異世界の旅でさまざまな経験をして、
自分を見つめ直した眞人は、
現実を生きていこうとするのだった。
一言で言えば、本作は少年の成長物語である。
私が理解できたのはこの程度でしかない。
作中に登場するキャラクターやその関係性について、
宮崎駿監督の生い立ちや彼の考え方などが反映されており、
それをあらかじめ知っていれば見方が変わって楽しめる。
という話をよく聞くが、その楽しみ方はかなり玄人寄り。
そもそも1つの映画を面白く見るために、
「映画鑑賞以上の時間やコストを掛けて勉強しなければならない」
というのはナンセンスだと思う。
一部の評論家やマニアに関してはその限りではないだろうが、
一般人に関してはそこまでする必要は無いと思う。
初見で面白いと感じれば設定を深掘りしてもいいだろうが、
つまらないと感じたのに面白く見るために
時間とお金を費やすのはオススメしない。
おそらくとしか言えないが、
監督自身は観客にそこまで要求しているわけではないだろう。
●質疑応答 友人とのやり取り
Q、主人公・眞人の母・ヒサコの亡くなった原因は?
A、入院している病院が火災に遭い、それに彼女が巻き込まれて亡くなった。
というのは間違いないと思うが見た人の中では
「戦火における空襲」と「なんらかの理由で発生した火事」の
2パターンで論じられているようだ。
私は一度しか観ていないが、空襲であるようには見えなかった。
鳴り響いていたのが火事を知らせる警報だったような気がしたし、
燃えているのがピンポイントで病院だけ、空襲であれば民衆が避難をせずに、
野次馬のように外出しているのに違和感がある、などの理由からだ。
ただ、一瞬での出来事だったので確信があるわけではない。
そのすぐあとに戦時中であることが明言されているので、
戦禍によるものであるほうが自然と言えば自然でもある。
Q、相変わらずだけど芸能人の声優起用ってどう?
A、悪くないどころか、全体的に結構よかったと思う。
主人公・牧 眞人(まき まひと)役の
「山時 聡真(さんとき そうま)」は繊細な少年を見事に演じ切っていた。
色がついていないフレッシュな感じがして好感が持てる。
アオサギ役の「菅田将暉(すだ まさき)」には感心してしまった。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』というアニメ映画の時は、
正直、実力派俳優といえど声優の演技は難しいのか?
という芝居だった記憶があるが、今回のアオサギは素晴らしかった。
やりやすい役だったのか、声優としての演技が向上したのか、
はたまた『打ち上げ花火~』の演出の問題だったのかは不明。
ヒミ役の「あいみょん」に関しては、
技術的な部分を指摘する方もいるようだが、
個人的には役柄に合っていたのでおおむね満足。
歌声よりも演じている声のほうが「少女っぽさ」を強く感じた。
そのほかは男女ともに名の知れたベテラン俳優なので、
上手く役になじんだ演技をしていたという印象。
ちなみに主人公の父・ショウイチを演じている
「木村拓哉(きむら たくや)」に関しては、声優としては結構好きなほう。
今回もデリカシーの欠けた性格を絶妙に演じていたし、
『ハウルの動く城』や『JUDGE EYES:死神の遺言』などの演技と聞き比べた限り、
演じ分けは意外とできているイメージ。
Q、小説『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)は読んでおくべき?
A、正直どちらでも構わないと思う。
そもそもタイトル名を拝借しただけで、この映画の原作ではないからだ。
おそらく大半の人には、映画自体の評価に影響しないと思われる。
少なくとも私は読んでいなかったが、映画自体は面白く感じた。
読んだ人によると、理解の幅や深みが間違いなく変わるとのこと。
かといって、それで内容が面白く感じるわけではないそうだ。
映画への理解度=評価の高さ、に結びついてはいない印象。
小説自体の内容は悪くないので読んでみたらどうか?
と薦められたが「映画を見るために読むべきか?」というのは疑問らしい。
ちなみに私のまわりの小説既読勢の意見としては、
監督は「観客が小説を読んでいることを前提には作っていない」印象だそう。
Q、登場キャラクターにそれぞれモデルがいるようだけど?
A、気にするな! たぶん正解はない!!
必要以上にメッセージを読み取ろうとすると疲れるし、
正解探しの迷子になる恐れがある。
世間では色々な説があふれているし、
おそらく監督自身も誰かを念頭に置いて描いたのだろうけど、
答え合わせをする方法がない以上、距離感を持って適度に楽しむのが吉!
というか仮に公式から答えが提示され、
自分の考察と外れていたとしても気にする必要はまったくない!
ワケのわからない世界を出してきたんだから、
ワケのわからない解釈されても仕方なかろう!!
こう解釈しなければならないなんて決まりは無いので、
見たまま感じたままの感想で一向に構わん!
考察が楽しい人はいくらでも考えればいいし、
そんなの面倒だという人は考えることを放棄して良い。
「アオサギ」は「アオサギ」だし「大叔父」は「大叔父」だ。
キャラクターに関しては、見たままでの理解で問題ない。
Q、対象年齢は? 子供を連れて見に行ってもいいかな?
A、止めておけ! 友人に聞かれた時はこう答えた。
本音をいえば「小学校高学年」ぐらいであれば、
理解はできなくても何かしら感じる子はいるとは思う。
ただ、かなり少数派な気がするし親側も楽しめるかが謎。
つまり年齢ではなく適正の問題。
生まれて初めて大スクリーンで見る映画が「コレ」になるとしたら、
その子供には同情を禁じ得ない。
もしかしたら適性のある子もいるかもしれないが、
気持ち悪いシーンもそれなりにあるため、
映画自体が嫌いになる可能性もある。そこは慎重になってほしい。
そもそも私は「ジブリ作品」が世間で言われているほど
子供向けの映画とは考えていない。
一部作品については魅力的なキャラクターデザインや、
躍動感のある動きで子供でも最後まで見られるだろうが、
全体的に話は結構複雑だったりするからだ。
同じ料金、同じ時間を支払うのであれば、
『ちいかわ』『アンパンマン』『スーパーマリオ』など
幼児でも楽しめる作品はたくさんある。
好みをリサーチして、見せてあげたほうがいいと思う。
子供を舐めているとかそういう話ではなく、
「ジブリ作品」=「子供向け」という安易な発想は注意!というニュアンス。
とりあえずその友人には『クレヨンしんちゃん』を薦めておいた。
親は子供にYouTubeで映画の宣伝PVを見せてあげて、
どれが見たいかを聞けばいいと思う。
というか宣伝ゼロの映画に、いたいけな子供を巻き込むな!
Q、くそっ! 金の無駄だった!! 腹立たしいっ!
A、実際、こう言っていた友人がいたが一理あるとは思う。
ところどころ共感できたからだ。
しかし、最終的な評価が私と真逆なのは、
彼が「熱狂的なジブリファン」であるせいかもしれない……。
・魅力的なデザインのキャラクターがいなかった。
→ 確かに全体的に地味ではあった。
アオサギ以外は印象に残っていないかもしれない。
これまでの作品と比較すると、人物だけでなく場所や建物の印象も薄い。
・過去のジブリ作品で見たことあるシーンばかりで新鮮さに欠ける。
→ 指摘され言われてみればそうなのだが、
見てる最中は気にならなかった。
ジブリ映画を見たのが久しぶりだったせいかも?
・物語の展開に起伏がないので退屈に感じる。
→ 盛り上がりに欠ける点は同意できるが、鑑賞中はあっという間に時間が過ぎた。
宣伝無しのため、事前にポスター以外の絵を見ていないからかもしれない。
というか今作に関しては、BGMが今までの作品よりも大人しめで
主張しなかった印象があるので、そのせいもあるだろう。
・美少女成分が足りない! ヒロインは?
→ 出てこないことはないけど中身はアレだしな……。まあ、わかる。
宮崎駿の監督作品で唯一、恋愛関係に発展しないケースかもしれない。
いや、そういう感情が全く無いとも言い切れない描写だった気もする。
こういった関係性について現代のフィクションではあまり見かけないが、
昔のアニメ、マンガ作品ではシチュエーションとして結構あったと思う。
自分に置き換えて考えると微妙な気持ちになるので、
受け入れがたい人がいるのも理解はできる。
・倒すべき敵、乗り越えるべき対象が存在しない!
→ 『千と千尋』の「湯婆婆」や『ラピュタ』の「ムスカ」のような
敵役のような人物がいないため、カタルシスが足りないとのことだった。
確かに本作の「大叔父」は敵ではなく、
主人公である「牧 眞人」が自分の内面と向き合う構造になっている。
つまり、自分自身が乗り越えるべき相手という物語である。
でも、ジブリって結構そんな話多くなかったっけ? と言ったが
納得していない模様。受け取り方は人それぞれなので仕方がない。
Q、いろんな人のレビュー記事や動画見たから満足しちゃった♪
A、あなたが同じ感想を抱くとは限らない、
時間とお金に余裕があったら、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
おそらく想像していた内容とは、良くも悪くも違うはずだ。
かくゆう私も、さまざまな「ネタバレあり」レビューを見てから
映画を鑑賞したわけだが、自分が想定したものは全く違っていた。
鑑賞後は私と感覚が近いと思っていたレビュアーとも異なる感想を持ったので、
やはり実際に見てみるまでは、本当の評価は下せないものだと改めて感じた。
いくら自分と趣味嗜好が近く感性の似通った人の感想でも、
それはあくまでも他人の感想であり、
決して自分自身の感想ではない、ということだ。
当たり前と言えば当たり前の話なのだが、
現代では優れたレビュアーやYouTuberが数多く存在するため、
きっと自分も同じような意見を持つだろうと、
見る前から勝手に決めつけることが多くなっており、
それを深く反省するきっかけになった。
私は考察系の動画を見ることは好きだし、
これからも数多くそうったものは見ることになるだろうが、
あくまで他人の意見であると、線引きをして楽しんでいこうと思う。
宮崎駿監督の最後の作品になるのではないか? という気持ちもあり、
実はご祝儀的な意味で、劇場に足を運んだという側面もある。
ハードルを下げていた分、評価が甘くなっているのではと言われれば、
その通りかもしれない。
ただ、逆にそれが原因でハードルを上げ過ぎてしまった人もいそう。
最後の作品になるんだったら「こういうものが見たい! こうであってほしい!!」
と意気込んで行くとツライと思う。
Q、結局キミはどこが面白かったの?
A、まずアニメーションとしての動きかよかった。
アオサギの飛ぶ姿や、眞人が塔を探索するシーンなど挙げていけばキリがないが、
ただ登場人物が動いているだけでも不思議な気持ちよさがある。
申し訳ないが他のアニメと何が違うのかは説明できない。
次に登場人物の所作。
寝ている眞人を起こさないよう、
静かに部屋から出ようとする継母であるナツコ。
父・ショウイチの靴のみ玄関で脱ぎ散らかしてあるなど、
セリフだけでなく細かな描写で、その人物の性格を表している点。
最後に話の展開および締め方。
一人の少年の成長物語というシンプルかつポジティブな内容で、
感情移入がしやすかった。
そう、意味不明で説明不足な世界観ではあるが、
私の結論としては本作は「シンプルな映画」だったのだ。
つまり、わからないところは全くわからなかったが、
わかる部分はわかりやすい作品である、というのが最終的な感想。
どういう人にオススメかと聞かれると、非常に困ってしまう。
肯定派の共通項を探したところで、見えて来るものはないだろうし、
否定派の人間と気が合わないということもないだろう。
1つだけ言えるのは「百聞は一見にしかず」である。
自分のリスペクトしている人の感想がなんであれ、
直接自分の目で確かめるまで、
自分にとっての真価を見極めることはできない。
タイパ(タイムパフォーマンス)が重んじられる現代では、
外れコンテンツに遭遇したくないという気持ちはよくわかる。
誰だって評価の高い物のみを摂取して生きていきたいだろう。
ただ、誰かにとってのゴミが、
別の誰かのとっても宝物であることもあれば、その逆もまたしかりだ。
それは創作物に限らず人間にも当てはまることだと思う。
マスコミの宣伝無しの本作は、そんなことを考えるきっかけになった。
いい歳をした中年おじさんではあるが、
ぼくがどう生きるか? 考えていきたいと思う。
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