©Kaoru Mori 2024
※人名、組織名などは敬称略でお伝えしております。
イギリスへ帰国したヘンリーが描かれる!
今巻では眼鏡イギリス人「ヘンリー・スミス」が主役。
「タラス」を連れてロンドンにある実家へと戻るが、
家族からしてみれば戸惑いのほうが大きく、
歓迎されたとは言い難い状況だった。
父や兄に関しては半ば諦めていたが、
母はかたくなに認めないという態度。
原住民の娘であるタラスを明らかに差別しており、
実家の所有する屋敷への立ち入りを禁じられてしまう。
そのためヘンリーとタラスは、
田舎にある「ホーキンズ」の別荘を借りて、
そこで生活をすることになるのだった。
基本的にヘンリーとタラスにスポットを当てた内容だが、
「タラスの義母」や案内役の「アリ」、
護衛を務めていた「ニコロフスキ」など、
2人が関わってきた人物のその後も描かれる。
アリやニコロフスキは愛着のあるキャラクターだったので、
多少なりとも触れてくれたのはうれしかった。
特にタラスの義母については、
気がかりだった部分を回収してくれたので、
かなりホッとできたエピソードだ。
タラスはこのシリーズに登場する『嫁』の中では、
口数が少ないほうで感情が読めないところがあるが、
ヘンリーに対する視線や仕草から、
彼への愛情が感じられてニヤニヤしてしまう。
なお、ヘンリーの母はタラスについて
差別的な発言をしていたが、
周囲の態度や時代背景を考えると、
彼女の考え方のほうが一般的なのだろう。
タラスは落ち着きのある聡明な女性。
別荘にあった書物に興味を持っていたようだし、
言語や読み書きを習得する展開を期待している。
それがきっかけでヘンリー母の
理解が得られたりはしないだろうか?
ちなみにヘンリーはホーキンズから、
「交友関係が狭い」と皮肉を言われていたが、
人との出会いに関してはかなり恵まれていると思う。
兄やホーキンズも結局協力してくれているし、
旅先で出会った人間達も善良な人間が多く、
なんと言っても献身的な嫁とまで出会えたワケである。
独身勢としてはうらやましい限りだ……。
今回、舞台がイギリスに移ったことで、
これまでとは雰囲気がガラリと変わり新鮮な印象を受けた。
とはいえ、細部に至るまで描き込まれた絵は健在!
息を飲んでしまうほど美しいため、
キャラクターだけでなく洋服の柄や背景、
小物にも注目しつつ、じっくりと堪能してほしい。
本作については、アニメで見たいという気持ちはかなりある。
ただ、ここまでのクオリティを再現できる
予算と時間が確保できる気がしないため
現実的ではないだろう。
何よりも作中に流れる空気感は、
この作者でしか出せない気がするのだ。
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